
彼が初めて読書会に現れて、「稲刈り男です」と名乗ったときの小さな衝撃が体内にくっきり残っている。イネカリオ?けれども彼はその衝撃的な名乗りを放り出し、今は「カリオリヘイ」という名前で活動をしている。その最初の一歩である展示会場をうちの店に選んでくれて、とても嬉しいです。
自分のペースで誠実に言葉をつむぎだす読書会での姿を、今なお優しい笑顔の向こうに携えたまま、写真を撮るときのカリオさんは「狩人」の目をしているんじゃないかとにらんでいます。カメラの向こうなので、こちらからは見えないのですが。そんな彼の「フォトエッセイ展」、じっくり何度も味わってください。
普通になるまで日記
”みんなにとって普通とは何なのか?”
僕は小さい頃から常にこの疑問を抱きながら、生きてきました。そして、僕にとっての普通とは、”あらゆる状況に耐え、だれにも頼らずに生活をこなしていくことだ”と考えるようになっていきました。平日は安定した給料が手に入る会社で、上司や周りにもまれながら、1日8時間の仕事をこなす。そして、土日や退勤後の時間は自分のために使い、もらった給料で家計をやりくりしながら、日々を過ごす。そんな生活をうまくできない自分に、とても劣等感を感じていました。大学を卒業した後の2年間は貯金がなかったので、実家から往復4時間かかる職場で仕事をしながら、奨学金を全額返済しました。当時の上司のあたりが強かったり、よくわからないしきたりに苦悩したりしたことが原因で、精神的に病み、休職することもありました。
結局その会社を辞め、1年間仕事をしない日々を過ごしました。しかし、やはり”普通になりたい”という気持ちが沸き上がり、アルバイトをしながら再就職先を探し、ようやく安定した職場を見つけました。けれども、お金を貯めるため実家から往復3時間かけて会社に通い、上司や周りの人にもまれながら残業する日も多かったので、再び精神的にしんどくなっていきました。そして、また休職することになり、今まで目指してきた”普通になる”ということが、ますます遠のいていきました。
それでも、普通になることを諦めきれない。
次こそは一人暮らしの部屋を探して、普通になりたい。
気持ちを奮い立たせようとした時、日記を通して自分を見つめなおそうと思い立ち、”普通になるまで日記”を書くことにしました。
でも、”普通になる”って難しい。食品や物件の賃料など物価が高騰しているのに安い給料でやりくりしなければならず、貯金なんてできなさそうな生活。1日8時間以上の仕事を、週5日こなすことの精神的苦痛。そして、何事にも”自己責任”という言葉がつきまとい、周りに迷惑をかけたり失敗することを許さない社会からの抑圧。自分がうらやましいと思っていたはずの”普通になる”ことへの恐怖感に葛藤しながら、日記を書く日々を過ごしてきました。今回はその日記を、写真と合わせて展示します。
この作品を見て、”みんなにとって普通とは何なのか?”ということを見つめなおすきっかけにしていただければ幸いです。
カリオ リヘイ
カリオリヘイさん在廊予定(急な変更もあるかもなので、カリオさんのSNSなどもご確認ください)
6月5日(金)14:00~18:00
6月12日(金)14:00~18:00
6月13日(土)14:00~18:00
6月14日(日)14:00~18:00




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